環境対応燃料は、脱炭素の取り組みのなかで電力の切り替えと並んで検討される選択肢です。バイオ燃料とカーボンオフセット燃料にはそれぞれ特徴があり、自社にどの選択肢が適しているのか判断しにくい場合があります。
判断を難しくしているのは、ひとくくりに「環境対応燃料」と呼ばれていても、削減の仕組みが同じではない点です。燃料を置き換えるものと、排出量を相殺するものでは、確認すべき条件も効果の示し方も変わります。
この記事では、環境対応燃料の種類と特徴を整理し、選ぶときに確認したいポイントと用途別の考え方を紹介します。
この記事でわかること
環境対応燃料が求められる背景
環境対応燃料が検討されるのは、電力を再生可能エネルギーに切り替えるだけでは削減しきれない排出が残るためです。まず、自社の排出量がどのように分けられているのかを押さえておきましょう。
電力の切り替えでは届かない排出がある
温室効果ガスの排出量は、GHGプロトコルという国際的な算定・報告基準に基づいています。燃料の燃焼に伴う排出はScope1、電気の使用に伴う排出はScope2と呼ばれ、それぞれ別の枠として扱われます。
Scope2は再生可能エネルギーの導入などによって削減を進めやすい一方、Scope1は燃料の燃焼に伴って発生するため、電力の切り替えだけでは削減できません。
「環境対応燃料」には2つの考え方がある
ひとつは燃料そのものをバイオマス由来の燃料に置き換える考え方で、バイオ燃料がこれにあたります。もうひとつは、化石燃料の使用に伴う排出量に相当するカーボンクレジットを活用して相殺する考え方で、カーボンオフセット燃料が該当します。燃料を置き換えるのか、排出量を相殺するのかによって、確認すべき条件も社内での説明の仕方も変わります。
環境対応燃料の主な種類と特徴
出光エナジーソリューションズが扱う環境対応燃料は、原料や仕組みの異なる3つが中心です。あわせて、電力側の選択肢も取り上げます。
バイオ燃料|出光リニューアブルディーゼル(IRD)
出光リニューアブルディーゼル(IRD)は、廃食油や植物油などの再生可能な資源から製造される軽油の代替燃料です。原料に生物資源を用いるため、燃料使用時に発生するCO2は、原料となる生物資源が成長過程で大気中から吸収したCO2に由来すると考えられます。従来の化石燃料と比較して、温室効果ガスの排出量を大幅に削減できます。
品質面では欧州EN規格(EN15940:2016)に準拠し、輸入ごとの分析とロット管理が行われています。調達を行うメーカーは、バイオ燃料の持続可能性基準である国際認証「ISCC EU」を取得しています(2025年2月時点)。
バイオ燃料|出光B5軽油
出光B5軽油は、通常の軽油に5%以下の脂肪酸メチルエステル(FAME)を混合した軽油です。国が定める強制規格をクリアしており、通常の軽油と比較して約5%のCO2削減効果があります。
「通常軽油と同等の扱い」とされているため、エンジンメーカーが保証している燃料です。軽油を使用している既存の車両や機器で、通常の軽油から切り替える形で導入しやすい点が特徴です。供給エリアは限られ、北海道(一部)では「出光バイオディーゼル5(IBD5)」、東北・関東・中部・関西・九州エリア(一部)では「B5軽油」の名称で供給されています。
カーボンオフセット燃料|出光カーボンオフセットfuel(ICOF)
出光カーボンオフセットfuel(ICOF)は、カーボンクレジットを付与した燃料油です。燃料使用時に排出されるCO2排出量を、既存設備を変更することなく相殺します。カーボンクレジットとは、森林の保護や植林、再生可能エネルギーの導入などによるCO2の吸収・削減効果を認証し、取引可能な価値として扱う仕組みです。
初期費用は不要で、油種とオフセット割合を選べ、CO2オフセット量を明記した供給証明書が発行されます。100%オフセット、50%オフセット、10%オフセットのなかから、必要な割合を選択でき、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)での報告にも対応した「ICOF J」(100%オフセット)もあります。
あわせて検討したい電力の切り替え
燃料と合わせて、電力側の切り替えを検討する選択肢もあります。出光CO2フリー電力「グリーンプラス」は、オフィスビルや工場、病院などの大・中規模施設向けの特別高圧・高圧プランで、再生可能エネルギー電源を活用したCO2フリー電力プランが用意されています。供給エリアは出光でんきに準じ、沖縄電力エリアおよび離島は対象外です。
選び方の4つのポイント
環境対応燃料を選ぶときは、削減効果の大小だけで比較すると、適切な選択が難しくなります。導入までの進めやすさを左右する4つのポイントを確認しましょう。
どの排出を減らしたいのか
まず確認するのは、削減したい対象がScope1なのかScope2なのかという点です。燃料の燃焼に伴う排出を減らしたいのであれば、バイオ燃料かカーボンオフセット燃料が候補になります。そのうえで、バイオ燃料は排出量そのものを減らすのに対し、カーボンオフセット燃料はクレジットで相殺するという違いを踏まえておきましょう。
既存の設備・車両でそのまま使えるか
既存の設備や車両をそのまま使えるかどうかが、導入までのハードルを大きく左右します。設備の改造や入れ替えが必要になると、導入のハードルが高くなるためです。
出光リニューアブルディーゼル(IRD)は既存設備をそのまま活用でき、出光B5軽油はエンジンメーカーの保証対象です。カーボンオフセット燃料は燃料自体の仕様を変えないため、設備側の変更は生じません。
供給エリアと荷姿を確認する
出光B5軽油は北海道(一部)と、東北・関東・中部・関西・九州エリア(一部)に限られます。出光リニューアブルディーゼル(IRD)は全国への出荷に対応していますが、荷姿はドラムとなり、給油作業は利用者側での実施か別途相談となります。複数拠点で導入する場合は、それぞれの供給条件を確認する必要があります。
初期投資と継続コストで比較する
カーボンオフセット燃料は初期費用が不要で、オフセット量を必要な分だけ選べます。限られた予算から導入し、効果を確認しながらオフセット割合を引き上げていく方法も取りやすい点が特徴です。バイオ燃料は燃料単価や供給条件が選択肢ごとに異なるため、車両や機器の台数、年間の燃料使用量を踏まえて試算します。
| 選択肢 | メーカー保証 | Scope1の扱い | 供給の安定性 |
|---|---|---|---|
| 出光リニューアブルディーゼル(IRD) | ○(一部メーカー) | 排出量を削減 | エリア限定 |
| 出光B5軽油 | ○ | 排出量を削減(約5%) | エリア限定 |
| 出光カーボンオフセットfuel(ICOF) | ○ | クレジットで相殺 | 安定 |
| 軽油(従来の燃料) | ○ | 削減なし | 安定 |
用途別の選び方と、あわせて検討したい対策
実際の選定では、燃料を使う対象によって向き不向きが分かれます。用途ごとの考え方と、あわせて検討したい対策をご紹介します。
社用車・トラックなど車両で使う場合
軽油を使用している車両であれば、出光B5軽油は通常の軽油と同等の扱いのため、まず試しやすい選択肢です。エンジンメーカーが保証している燃料である点も、社内で導入を検討する際の判断材料になります。
出光リニューアブルディーゼル(IRD)は、石油由来の軽油と混合して使用できません。許可なく追加給油した場合は違法行為となるため、専用の運用ルールを決めたうえでの導入が必要です。
ボイラ・産業用燃料として使う場合
重油や軽油をボイラなどの産業用燃料として使用している場合、設備を変更せずに排出量を相殺できるカーボンオフセット燃料が検討しやすいです。温対法での報告が必要な拠点では、「ICOF J」(100%オフセット)が使用できます。
建物側の熱負荷もあわせて下げたい場合
燃料や電力の切り替えに加えて、建物側の熱負荷を下げる対策を組み合わせる考え方もあります。放射冷却素材ラディクールは、日射を反射するだけでなく、吸収した熱を赤外線(電磁波)として外部へ放出する素材です。屋根に塗る放射冷却塗料タイプと、窓ガラスに貼る放射冷却フィルムタイプがあります。
電力を使わずに建物側の熱負荷を下げられることから、空調の消費電力削減と、空調のない現場の作業環境改善のどちらにも用いられます。エネルギーを切り替える対策と、使用量そのものを抑える対策は、あわせて検討可能です。
導入時の注意点
環境対応燃料の導入では、燃料を切り替えるだけでなく、供給条件や設備との適合性なども確認する必要があります。導入前に確認しておきたい点を整理します。
「削減」と「オフセット」を混同しない
バイオ燃料はCO2排出量そのものを減らしますが、カーボンオフセット燃料はクレジットで相殺する仕組みであり、排出量算定や報告書での扱いは同じになりません。社内の算定ルールや、取引先から求められている開示の形式を確認したうえで判断します。相殺分をどのように報告するかをあらかじめ整理しておくと、導入後の説明にも一貫性を持たせやすくなります。
供給条件を事前に確認する
導入を決める前に、拠点の所在地と年間の使用量を整理したうえで供給可否を確認します。地域によって販売名称が異なる点、ドラムでの出荷となる点も踏まえ、保管場所と給油作業の体制をあわせて決めておきましょう。
品質と取り扱いの条件を確認する
出光リニューアブルディーゼル(IRD)は欧州EN規格(EN15940:2016)に準拠し、保証性状や試験分析の結果が提供されるため、社内の品質管理部門と共有しておくと検討が進めやすくなります。機器への適合は、燃料の仕様だけでなく使用している機器の年式や使用条件も影響するため、不明な点は、事前に機器メーカーへ確認する必要があります。
よくある質問
Q. 環境対応燃料にはどのような種類がありますか?
A. 燃料そのものをバイオマス由来に置き換えるバイオ燃料(出光リニューアブルディーゼル、出光B5軽油)と、排出量に相当するクレジットを付与するカーボンオフセット燃料(出光カーボンオフセットfuel「ICOF」)があります。
Q. カーボンオフセット燃料は初期費用がかかりますか?
A. 初期費用は不要です。通常の燃料にカーボンクレジットを付与し、100%オフセット、50%オフセット、10%オフセットのなかから必要な割合を選べるプランが用意されています。
Q. 既存の設備や車両をそのまま使えますか?
A. 出光リニューアブルディーゼル(IRD)は既存設備をそのまま活用でき、出光B5軽油は通常軽油と同等の扱いでエンジンメーカーが保証しています。ただしIRDは石油由来の軽油と混合して使用できません。
Q. どのエリアでも供給を受けられますか?
A. 出光B5軽油は、北海道(一部)では「出光バイオディーゼル5(IBD5)」、東北・関東・中部・関西・九州エリア(一部)では「B5軽油」の名称で供給されています。出光リニューアブルディーゼル(IRD)は全国へ出荷されますが、荷姿はドラムです。
Q. 削減量はどのように報告できますか?
A. 出光カーボンオフセットfuel「ICOF」では、CO2オフセット量を明記した供給証明書が提供され、「ICOF J」は温対法での報告に対応しています。バイオ燃料を使う場合は排出量そのものが減るため、オフセット分とは算定や報告書での扱いが異なります。
まとめ
環境対応燃料は、それぞれ削減の仕組みや導入条件が異なるため、同じ基準だけで比較すると選びにくくなります。まず自社が削減したい排出がScope1なのかScope2なのかを確認し、そのうえで燃料を置き換えるのか、排出量を相殺するのかという違いを踏まえて候補を絞り込むと、判断の軸が定まります。
実際の選定では、既存の設備や車両をそのまま使えるか、供給エリアと荷姿はどうか、初期投資と継続コストはどうかという観点で比較しましょう。出光エナジーソリューションズでは、環境対応燃料に加えて、出光CO2フリー電力「グリーンプラス」や、建物側の熱負荷を下げる放射冷却素材ラディクールも含めて、複数の対策を組み合わせて提案しています。
この記事のまとめ
- ✓環境対応燃料が検討されるのは、電力の切り替えではScope1の排出が残るため
- ✓燃料を置き換えるバイオ燃料(IRD・B5軽油)と、クレジットで相殺するカーボンオフセット燃料(ICOF)に分かれる
- ✓選定では、削減対象・既存設備への適合・供給エリアと荷姿・コストの4点で比較する
- ✓「削減」と「オフセット」は仕組みが異なるため、社内の算定ルールに照らして選ぶ


