畜産施設の暑熱対策では、換気や送風、気化冷却、十分な飲水・飼料管理に加え、屋根から畜舎内へ入る熱を抑えることが重要です。いずれか一つに頼るのではなく、家畜の状態と畜舎の環境に応じて複数の対策を組み合わせる必要があります。
暑熱ストレスは、牛・豚・鶏の飼料摂取量を低下させ、乳量や増体、繁殖成績、産卵率などに影響します。本記事では、暑熱ストレスが生じる仕組みと判断の目安を確認したうえで、一般的な暑さ対策から、見落とされやすい入熱の対策方法までわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 気象庁データで見る近年の夏の高温化の実態
- 畜種別の適温域・上限臨界温度と、温湿度指数(THI)による暑さの目安
- 乳牛・肉牛・豚・鶏の生産性に現れる暑熱ストレスの影響
- 換気・送風などの一般的な対策と、畜舎の屋根から入る熱への対策
夏の暑さが畜産にもたらす影響
家畜は人よりも低い気温から暑熱ストレスを受けることがあり、猛暑日になる前から対策が必要です。まずは、高温多湿の環境で家畜の体に何が起こるのか、どの温度帯から注意すべきかを確認しましょう。
猛暑日になる前から暑熱対策が必要
2025年夏の日本の平均気温は平年差+2.36℃となり、1898年の統計開始以降で最も高くなりました。ただし、畜産現場で注意すべきなのは、気温が35℃を超える日だけではありません。畜種によっては20℃台から暑熱の影響を受け、湿度が高いほど体に熱がこもりやすくなります。そのため、外気温だけで判断せず、畜舎内の温度・湿度と家畜の様子を継続的に確認し、早めに対策を始めることが大切です。
家畜が暑熱ストレスを受ける仕組み
牛・豚・鶏は、汗腺が少ない、あるいは体格に対して発熱量が大きいといった理由から、体にたまった熱を外へ逃がしにくい動物です。気温と湿度が上がると、家畜は呼吸数を増やして熱を逃がそうとし、同時に餌を食べる量を減らして体内での発熱を抑えようとします。この状態が暑熱ストレスであり、飼料摂取量の低下を通じて栄養状態と生産性に影響が及びます。夜間も気温が下がらない日が続くと体温の回復が追いつかず、負担は日をまたいで積み上がっていきます。高温が長引く局面では、へい死のリスクも高まります。
家畜が快適に過ごせる温度の範囲
家畜が体温調節に余分な負担をかけずに過ごせる温度の幅を適温域と呼びます。これを超えると体温調節の負担が増し、生産性への影響が出やすくなる温度を上限臨界温度といいます。これらの温度は畜種だけでなく、成長段階や生産量、飼養環境によっても変わります。一般的な目安は次のとおりです。
| 畜種 | 適温域 | 上限臨界温度 |
|---|---|---|
| 乳牛 | 4〜24℃ | - |
| 肉用牛 | 10〜20℃ | 30℃ |
| 豚 | 5〜20℃ | 27℃ |
| 採卵鶏 | 13〜25℃ | 30〜32℃ |
| 肉用鶏(ブロイラー) | 19〜23℃ | 28℃ |
肉用鶏の適温域は19〜23℃と幅が狭く、豚は上限臨界温度が27℃という低い水準にあります。真夏の日中に畜舎内が30℃を超える環境では、複数の畜種が上限臨界温度を上回るおそれがあります。数値は一律の管理基準ではないため、家畜の呼吸や採食の様子も確認してください。乳牛は適温域の上限である24℃に加え、次に述べる温湿度指数(THI)を組み合わせて判断します。
暑熱の程度を測る温湿度指数(THI)
気温だけでは暑さの厳しさを捉えきれないため、乳牛の暑熱ストレスを判断する指標として、気温と湿度から算出する温湿度指数(THI)が用いられます。湿度が高いと呼吸などによる放熱が妨げられるため、同じ気温でも負担の重さが変わります。気温24℃・湿度70%ではTHIが約72に達します。乳牛における目安は次のとおりです。
| THIの範囲 | 乳牛への影響の目安 |
|---|---|
| 68未満 | 暑熱ストレスなし |
| 68〜71 | 軽度 |
| 72〜79 | 軽度〜中程度 |
| 80以上 | 中程度以上。健康リスクに注意 |
搾乳牛では、THIが68から72を超え始めるあたりで乳量の減少が認められます。気温24℃・湿度70%という条件は梅雨の時期にも生じるため、猛暑日を待たずに暑熱対策が必要です。気温と湿度がさらに上がると暑熱ストレスも強まり、送風や換気だけでは負担を抑えきれない場合があります。畜舎内に温湿度計を設置してTHIを把握しておくと、対策を始める時期と強める時期の判断に使えます。外気温だけで判断せず、乳牛の呼吸数や採食量、乳量の変化もあわせて確認しましょう。
暑熱ストレスが家畜の生産性に与える影響
暑熱ストレスによる被害は、畜種と生産の段階によって現れ方が変わります。ここでは乳牛、繁殖牛・肉牛、豚、鶏の順に、生産性への影響を整理します。
乳牛への影響
乳牛では、飼料摂取量の低下がそのまま乳量の減少につながります。あわせて乳脂肪などの乳成分も低下し、生乳の品質面にも影響が及びます。搾乳牛は泌乳のために代謝が活発で発熱量が大きく、適温域の上限が24℃であることをふまえると、夏季は継続的に負担のかかる状態に置かれます。THIが68から72を超えるあたりで乳量の減少が現れるため、猛暑日が来る前から影響が始まる点に注意が必要です。
繁殖牛・肉牛への影響
繁殖を担う牛では、発情の兆候が分かりにくくなるなど繁殖成績の低下が問題になります。受胎の機会を逃せば分娩間隔が延び、夏の暑さの影響が翌年の生産計画にまで及びます。肥育中の肉牛では飼料摂取量の減少によって増体(発育)が停滞し、出荷時期や仕上がりが変わることがあります。肉用牛の適温域は10〜20℃、上限臨界温度は30℃で、猛暑日にはこの水準を超えた環境になります。
豚への影響
豚は汗による放熱がほとんどできず、上限臨界温度も27℃という低い水準です。繁殖母豚では妊娠率や1腹あたりの産子数が低下し、暑さの影響が数か月先の出荷頭数の減少として現れます。夏の被害が秋以降の売上に及ぶため、原因と結果が結びつきにくいのが難しい点です。肥育豚でも飼料摂取量の低下によって肥育が停滞します。飼料設計の面では、必須アミノ酸であるリジンの添加など、夏季の栄養補給を工夫する取り組みが知られています。
鶏への影響
採卵鶏では産卵率が低下し、卵殻の品質も下がります。殻が軟らかくなって出荷できない卵が増えるため、産卵数の減少と歩留まりの低下が同時に起こります。適温域は13〜25℃、上限臨界温度は30〜32℃が目安です。肉用のブロイラーは適温域が19〜23℃、上限臨界温度が28℃とさらに狭い範囲で、飼料摂取量の減少によって発育が停滞します。鶏は体が小さく体温調節の余裕が少ないため、高温が続く環境ではへい死のリスクが高まります。
畜舎で行われている基本的な暑さ対策
畜舎の暑熱対策は、空気を動かす、水の気化を使う、家畜の体の内側から支えるという3つの方向で組み立てられています。ここでは現場で広く行われている手法を確認します。
換気による対策
換気は、室内にこもった熱気と湿気を外へ排出し、外気を取り込む基本的な対策です。畜舎の一方から他方へ空気を一定方向に流すトンネル換気は、家畜のいる空間の空気をまとめて入れ替える手法として広く用いられています。ただし、取り込む外気そのものが35℃に近い日中には、換気だけで室温を下げられる幅は限られます。換気は室温を外気温に近づける対策であり、外気温より低い室温をつくる働きはない点を押さえておく必要があります。
送風による対策
送風は、ファンで家畜の体表に風を当てて体感温度を下げる対策です。乳牛では、牛体に約2m/sの風が当たるよう送風機を設置するのが基本になります。体感温度は「気温(℃)− 6×√風速(m/s)」という考え方で捉えられ、牛舎内が30.6℃の環境で牛体に秒速2mの風を送ると、体感温度は22.1℃相当まで下がります。これは乳牛の適温域の上限である24℃を下回る水準で、送風が暑熱対策の中核に置かれる理由がここにあります。一方で風が届かない位置の個体には効果が及ばないため、送風機の設置間隔と向き、家畜の滞在位置との対応を確認しておく必要があります。
気化冷却による対策
気化冷却は、水が蒸発するときに周囲から熱を奪う性質を利用して、外気や家畜の体を冷やす対策です。細霧・ミストによる噴霧、外気を湿らせて取り込むクーリングパッド、牛の体に直接水をかけるドロップクーリングなどが用いられます。換気では下げられない外気温以下の室温をつくれる点が、気化冷却の利点です。ただし室内の湿度が上がりやすく、多湿な環境ではかえって家畜の放熱を妨げます。THIが湿度を含む指標であることからも分かるように、気化冷却は換気との併用が前提になります。
飲水・飼料面の管理
暑熱下の家畜は水を多く必要とするため、いつでも十分な量の新鮮な水を飲める環境を整えることが土台になります。飼料の面では、暑さで食欲が落ちる日中を避けて給餌する、少ない摂取量でも栄養を確保できるよう飼料設計を見直すといった対応が取られます。豚で知られるリジンの添加のように、畜種に応じた栄養面の工夫も対策の一つです。ここまでの換気・送風・気化冷却・飲水と飼料の管理は、いずれも家畜のいる空間の空気か、家畜の体そのものに働きかける対策です。建物から入ってくる熱については、別の系統の対策で扱う必要があります。
畜舎の屋根から入る熱への対策
畜舎が外気温以上に暑くなる背景には、建物側の要因があります。ここでは夏の屋根で何が起きているかを整理したうえで、屋根に対して行われている一般的な手法を確認します。
夏の屋根の表面温度と室内への影響
多くの畜舎で使われる金属屋根(折板屋根など)は、夏の強い日射を受けると表面温度が50℃を超えることもあります。屋根が受け取った熱は輻射(放射)と伝導によって室内側へ移動し、屋根材や小屋組みに蓄えられます。日が傾いても蓄えられた熱は夜間にかけて室内へ放出され続けるため、外気温が下がっても畜舎内の温度は下がりにくくなります。家畜は夜間に体温を回復させる必要があるため、夜も熱が残る状態は暑熱ストレスを翌日へ持ち越す要因です。畜舎が高温になる要因は屋根からの入熱と蓄熱だけではなく、換気不足による熱気の滞留、密飼いによる家畜自身の発熱、ふん尿などの発酵熱も重なります。ただし、これらの熱源のうち日射は建物側で減らせる余地があり、屋根は対策の起点として意味を持ちます。屋根からの輻射熱は家畜の暑熱ストレスを増幅させる要因でもあるため、対処の優先度は低くありません。
遮熱・断熱による屋根の対策
屋根からの入熱に対しては、断熱材の設置、断熱・遮熱塗装、屋根への散水といった手法が有効とされています。断熱材は屋根から室内への熱の伝わりを遅らせ、遮熱塗装は日射の一部を反射して屋根が受け取る熱量を減らします。屋根への散水は、水が蒸発するときに熱を奪う性質を使って屋根面の温度を下げる方法で、水量の確保と散水設備が前提になります。効果の例として、屋根に石灰を塗布した牛舎で、屋根裏温度が約15℃、牛舎内温度が約5℃低下した事例が報告されています。簡易な白色化でも屋根裏と牛舎内の温度に差が出ることを示す結果であり、屋根面で日射を跳ね返す対策には一定の効果が見込めます。畜舎の場合、屋根面積が広い分だけ入熱の総量も大きくなるため、屋根に手を入れる余地は残されているといえます。
放射冷却素材ラディクールを畜舎の屋根に用いる対策
遮熱は日射の反射、断熱は熱の伝わりの抑制に働きます。一方、吸収した熱を外部へ放出することに着目した素材として、放射冷却素材ラディクールがあります。
放射冷却素材ラディクールの考え方
放射冷却素材ラディクール(Radi-Cool)は、日射を反射して熱の侵入を抑えるとともに、吸収した熱を電磁波(赤外線)として外部へ放出する素材です。遮熱が主に日射の反射、断熱が熱の伝わりの抑制に働くのに対し、放射冷却によってたまった熱を外へ逃がす働きも備えている点が特徴です。稼働のために追加のエネルギーを使わないため、電源や配管の増設が難しい畜舎でも導入の条件が整いやすくなります。製品形態には塗料とフィルムがあり、塗料は主に屋根や屋外設備、フィルムは主に窓ガラスに用います。
畜舎の屋根と放射冷却素材ラディクールの相性
畜舎の屋根は、一日を通して日射を受け続ける広い面です。表面温度が50℃を超える面で入熱を抑えられれば、日中の室温上昇と夜間の蓄熱の双方に働きかけられます。畜産分野では、豚舎の屋根に放射冷却素材を設置した事例もあります。
畜産施設そのものの事例ではありませんが、同じく空調のない大空間の参考例として、トクヤマ海陸運送株式会社様の倉庫では、4,250㎡の屋根に放射冷却塗料ラディクールを施工しています。施工後の最高気温平均が施工前より1.0℃高かったにもかかわらず、倉庫内実測平均温度は35.0℃から31.7℃へ3.3℃低下し、倉庫内最高温度は40.0℃から33.0℃に低下しました。建物用途や換気条件は異なりますが、空調のない大空間で屋根からの入熱を抑えた事例として参考になります。
送風・換気と組み合わせる考え方
畜舎には常に家畜がいるため、工場やオフィスのように空間全体を空調で冷やすのは現実的でない場合が多くあります。だからこそ、まず屋根から入る熱を抑え、そのうえで送風や換気を効かせる順序が合理的です。送風による体感温度の低下幅は風速に左右され、低下後の水準は元の室温が高いほど上がります。屋根での入熱抑制は既存の対策を置き換えるものではなく、換気・送風・気化冷却の効果を引き出す土台と位置づけられます。
畜産で放射冷却素材ラディクールを検討する際のポイント
検討の段階では、製品形態の選び方と効果の捉え方という2点を押さえると判断が進めやすくなります。
フィルムと塗料の使い分け
放射冷却素材ラディクールには、塗料とフィルムの製品形態があります。施工方法と主な用途が異なるため、屋根や窓など対象面の材質・形状に応じて選びます。両者の一般的な特徴は次のとおりです。
| 製品形態 | 施工の考え方 | 適した対象の例 |
|---|---|---|
| フィルム | ガラス面に貼り付けて施工する | 畜舎の窓ガラスなど |
| 塗料 | 屋根や屋外設備に塗布して施工する | 折板屋根などの屋根・屋外設備 |
畜舎の屋根に施工する場合は、塗料が中心です。折板屋根のように凹凸のある面でも、既存塗膜や錆、防水状態に応じた下地処理と塗装仕様を確認します。稼働中の畜舎では家畜を移動させずに施工できる範囲も条件になるため、施工時期と工程まで含めて相談しておくと計画が立てやすくなります。
効果の見え方と検討の進め方
放射冷却素材ラディクールの効果は、屋根の材質や面積、日射条件、換気や送風の状況によって変わります。換気が不足している畜舎と十分に確保されている畜舎では室温の下がり方が異なるため、あらかじめ一律の数値で効果を言い切ることは難しいのが実情です。検討を進める際は、畜舎内の温湿度を記録してTHIの水準を把握し、暑熱ストレスが強くなる時間帯と場所を特定するところから始めると判断材料が揃います。そのうえで屋根からの入熱が課題になっているかを見極め、施工事業者に相談しながら、屋根に放射冷却塗料ラディクールを施工するか、窓ガラスにフィルムを用いるか、どの範囲を対象にするかを詰めていく進め方が現実的です。導入後も同じ位置で温湿度を記録すれば、施工前後の比較で効果を確かめられます。
よくある質問
Q. 家畜が暑さの影響を受け始めるのは何℃くらいからですか?
A. 畜種によって異なります。適温域の上限は乳牛が24℃、肉用牛と豚が20℃、採卵鶏が25℃、肉用鶏が23℃で、これを超えると体温調節の負担が増えていきます。上限臨界温度は肉用牛が30℃、豚が27℃、採卵鶏が30〜32℃、肉用鶏が28℃で、この水準を超えると生産性への影響が出やすくなります。乳牛では温湿度指数(THI)も確認し、気温24℃・湿度70%で約72に達することや、THIが68から72を超え始めるあたりで乳量が減少しやすいことを目安に、早めに対策を始めましょう。
Q. 暑熱ストレスは家畜のどんな生産性に影響しますか?
A. 乳牛では飼料摂取量の低下によって乳量が減り、乳脂肪などの乳成分も低下します。繁殖牛では発情の兆候が分かりにくくなるなど繁殖成績が低下し、肉牛や肥育豚では増体・肥育が停滞します。豚では母豚の妊娠率や産子数が下がり、数か月先の出荷頭数の減少として影響が現れます。鶏では産卵率の低下と卵殻品質の低下が起こり、ブロイラーは発育が停滞します。いずれの畜種でも、高温が続けばへい死のリスクが高まります。
Q. 畜舎の暑さ対策は送風や換気だけで十分ですか?
A. 十分な送風は家畜の体感温度を下げ、換気は畜舎内の熱気や湿気を外へ排出するため、いずれも重要です。ただし、換気だけでは外気温より低い室温をつくれません。表面温度が50℃を超えることもある屋根からの入熱や、夜間に放出される蓄熱は建物側で減らす必要があります。屋根で入熱を抑えたうえで送風・換気を組み合わせることで、対策効果を高めやすくなります。
Q. 放射冷却素材ラディクールは遮熱塗料や断熱と何が違うのですか?
A. 遮熱は日射を反射して熱の侵入を抑え、断熱は熱の伝わりを抑える対策です。放射冷却素材ラディクールは、日射を反射する働きに加え、吸収した熱を電磁波(赤外線)として外部へ放出する仕組みを備えています。
Q. 放射冷却素材ラディクールは畜舎のどの部分に使えますか?
A. 畜舎で一日を通して日射を受け続ける屋根は、入熱対策の中心となります。放射冷却塗料ラディクールを屋根へ施工する場合は、既存塗膜や錆、防水状態を確認したうえで塗装仕様を選びます。放射冷却フィルムラディクールは主に窓ガラスに用います。稼働中の畜舎では、家畜を移動させずに施工できる範囲も条件になります。
まとめ
2025年の夏は平年差+2.36℃で、1898年の統計開始以降で最も高温となりました。猛暑日の年間日数も長期的に増加傾向にあります。この高温は家畜にも及びます。乳牛の適温域の上限は24℃、豚の上限臨界温度は27℃という水準に対し、真夏の畜舎はこれを上回る環境になります。暑熱ストレスは乳量と乳成分の低下、繁殖成績の低下、増体や肥育の停滞、産卵率と卵殻品質の低下として現れ、高温が続けばへい死のリスクも高まります。気温24℃・湿度70%でTHIが72に達することをふまえると、猛暑日を待たずに対策を始める判断が必要です。
換気・送風・気化冷却・飲水と飼料の管理は、畜舎内の熱気や湿気、家畜の体感温度と栄養状態に働きかける対策です。一方で、表面温度が50℃を超えることもある屋根からの入熱と夜間の蓄熱は、建物側で減らす必要があります。屋根で入熱を抑えたうえで送風・換気を組み合わせることで、既存対策の効果を引き出しやすくなります。遮熱と放射冷却を併せ持つ放射冷却素材ラディクールを屋根に用いる方法は、その選択肢の一つです。まずは畜舎内の温湿度を記録し、屋根からの入熱が課題になっていないかを確認しましょう。
この記事のまとめ
- ✓2025年の夏は平年差+2.36℃で統計開始以降最も高温となり、猛暑日も長期的に増加傾向にある
- ✓豚の上限臨界温度は27℃、肉用鶏の適温域は19〜23℃で、真夏の畜舎はこの水準を超えやすい
- ✓暑熱ストレスは乳量・繁殖・産卵の低下やへい死につながり、生産性と経営に直結する
- ✓表面温度が50℃を超える屋根の入熱を抑えたうえで送風・換気を効かせる順序が、対策の土台になる

