近年の猛暑により、オフィスの暑さ対策は快適さだけでなく、従業員の健康と企業の法令遵守に直結する重要なテーマになっています。エアコンの設定温度を巡る意見の食い違いや、席によって感じる温度差など、職場の暑さに関する悩みは尽きません。
本記事では、オフィスが暑くなる根本的な原因から、今すぐ実践できる対策、窓・空調設備の見直し、建物全体の断熱・日射対策までを段階的に解説します。さらに、放射冷却素材ラディクールを活用し、ガラス面や屋根から入る熱負荷を抑える方法も紹介します。
この記事でわかること
- オフィスが暑くなる4つの主要な原因
- すぐに取り入れられる暑さ対策とおすすめグッズ
- 建物全体・設備面からの本格的な暑さ対策
- 放射冷却素材ラディクールによる根本的な暑さ対策
オフィスが暑くなる原因
効果的な暑さ対策を講じるには、まず熱がどこから来るのかを理解することが欠かせません。オフィスの暑さは、外部から入る熱と室内で生まれる熱、そして空調環境が複合的に絡み合って生じます。
窓から入り込む日射熱
ガラス張りのビルや南向き・西向きの大きな窓を持つオフィスでは、日射による熱が室内に侵入しやすく、冷房を強めてもなかなか温度が下がりません。窓からの熱は窓際や天井付近に集中しやすく、席によって体感温度に差が出る「温度ムラ」の原因になります。
窓からの日射熱は、オフィスの暑さの主要な要因のひとつです。特に直射日光が長時間当たる窓面は、フィルムや外付け遮蔽などの対策によって、室内への入熱を抑えやすい場所です。
屋根や外壁から伝わる輻射熱
屋上や外壁も、夏場の熱負荷の大きな要因です。直射日光を浴びた屋根や外壁の表面温度は上昇し、その熱がじわじわと室内へ伝わってきます。特に最上階のオフィスでは、屋根からの輻射熱によって室温が上がりやすい傾向があります。
外壁が西日を長時間受ける建物では、夕方以降も室温が高いまま維持されやすくなります。屋上緑化や壁面緑化、断熱材の施工などは、こうした外部からの輻射熱を抑える手段として検討されます。
パソコンや照明による発熱
室内で生まれる熱も見逃せません。コピー機やプリンター、パソコンが密集するエリアでは、機器からの放熱で室温が局所的に上昇します。OA機器を一箇所に集約し、執務スペースから離すことで熱の集中を抑える工夫が有効とされています。
照明も熱源のひとつで、天井付近の温度を押し上げます。LED照明への切り替えは、消費電力を抑えつつ発熱も軽減できるため、暑さ軽減と省エネの両面で効果が期待できます。人の身体そのものも熱源であり、人口密度の高い会議室などは体感温度が上がりやすくなります。
空調効率を下げる室内環境
空調機器が十分な能力を持っていても、フィルターが汚れて風量が低下すると、冷気が届きにくくなります。フィルターの定期清掃に加え、吹き出し口・吸い込み口が什器でふさがれていないか、空調機器の能力と在室人数が合っているかも確認しましょう。
また、パーテーションや什器の配置によって冷気が行き届かず「熱だまり」が生じるケースもあります。室温だけでなく湿度も体感温度を左右し、湿度が高いと汗が蒸発しにくく、同じ気温でも蒸し暑さを強く感じます。室温・湿度の管理をオフィス全体で意識することが快適さの前提となります。
オフィスの暑さ対策の基本
原因を理解したら、次は具体的な対策です。ここでは、比較的手軽な対策から窓・空調設備、建物全体の改善までを段階的に紹介します。
扇風機やサーキュレーターの活用
エアコンの設定温度を大きく下げずに体感温度を下げる方法として、多くの場面で推奨されるのがサーキュレーターや扇風機の活用です。サーキュレーターは扇風機よりも遠くまで風を飛ばし、部屋全体の空気を循環させることで、暑い空気をかき混ぜてオフィス全体を涼しく感じさせます。
冷房時は空調に背を向けてサーキュレーターを置き、部屋の隅や窓から一番遠い場所に設置するのが効果的です。サーキュレーターの使い方として、空調の対角線上にやや上向きで設置すると室内の空気が対流しやすくなります。デスク周りの暑さ対策には、USB接続の卓上扇風機も設置場所を選ばず便利です。
冷感グッズや温湿度計の活用
冷却タオルやネッククーラーなどは、暑さを感じる従業員が個別に使える補助対策です。ただし、これらは体を一時的に冷やすものであり、室温や建物への入熱そのものを下げるものではありません。
オフィス全体では、温湿度計を窓際、会議室、OA機器周辺などに設置し、温度ムラと湿度を把握することが重要です。直射日光や空調風が直接当たる場所を避け、実際に人が働く高さで測定します。
| グッズ | 主な用途 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 卓上・ハンディ扇風機 | 空調風が届きにくい席 | 周囲への風・音に配慮 |
| ネッククーラー・冷却タオル | 個人の一時的な冷却 | 長時間の冷却を避ける |
| 温湿度計 | 窓際・会議室・OA機器周辺 | 直射日光・空調風を避けて設置 |
グッズはあくまで補助対策です。水分補給や休憩と組み合わせるとともに、慢性的な暑さには窓・空調・建物側の原因を改善する必要があります。
遮熱フィルムやブラインドの設置
窓からの日射を抑える方法には、ガラス面に施工するフィルム、ブラインド、庇などがあります。フィルムは製品によって透過性や日射への働き方が異なるため、採光・景観・既存ガラスとの適合性、熱割れのリスクを確認して選びます。
ブラインドは光量を調整しやすい一方、室内側で受けた日射熱が室内へ再放出される場合があります。可能であれば、外付けブラインドや庇など、日射がガラスに当たる前に遮る方法も検討しましょう。
空調設備や換気方法の見直し
オフィスの空調は、設定温度を一律に決めるのではなく、外気温・湿度・日射・在室人数・従業員の体調を踏まえて調整します。事務所衛生基準規則では、空調設備を設けている場合、室温18℃以上28℃以下、相対湿度40%以上70%以下となるよう努めることが示されています。
環境省は現在、クールビズで一律の「室温28℃」を呼びかけておらず、28℃はエアコンの設定温度でもありません。健康を優先し、温湿度の実測値と体調に応じて柔軟に運用します。温度ムラがある場合は、席の配置、サーキュレーター、空調の吹き出し方向も調整しましょう。
屋根や外壁への遮熱と断熱
建物の外側から入る熱を根本から抑えるには、屋根や外壁への遮熱・断熱が効果的です。天井裏や西日の当たる外壁に断熱材を施工すると、日射による室温上昇を抑えられます。屋上緑化は屋上表面の温度を下げ、環境負荷の低減にもつながります。
屋上緑化は、建物の荷重、防水、排水、継続的な管理を含めて検討する必要があります。庇や外付けブラインドは日射がガラスに当たる前に遮れるため有効ですが、建物の外観規制や風の影響、設置スペースも確認しましょう。
暑さの現れ方から優先対策を選ぶ
同じオフィス内でも、窓際だけ暑い、最上階で夕方まで熱が残る、OA機器周辺に熱がこもるといった違いがあります。温湿度計を複数箇所に設置し、時間帯ごとの温度差と熱源を確認すると、優先すべき対策を絞り込みやすくなります。
窓からの日射が主因ならガラス面、屋根・外壁の蓄熱が主因なら建物外皮、室内発熱や空調ムラが主因なら機器配置・空気循環を優先します。対策後も同じ位置・時間帯で測定し、改善効果を確認しましょう。
放射冷却素材ラディクールでオフィスの熱負荷を抑える
遮熱・断熱に加え、日射を反射しながら吸収した熱を外部へ放射する放射冷却も、建物への熱負荷を抑える選択肢です。ガラス面や屋根など、日射の影響を受ける部位に合わせて製品形態を選びます。
放射冷却の仕組みと遮熱・断熱との違い
放射冷却とは、物体が持つ熱を電磁波(赤外線)として外部へ放射することで、物体自体の温度を下げる自然現象です。晴れた夜に地面や車のボンネットが冷えるのも、この放射冷却によるものです。
放射冷却素材は、日射を反射して入熱を抑えながら、吸収した熱を赤外線として外部へ放射します。遮熱・断熱・放射冷却の違いを整理すると、次の通りです。
| 手法 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 遮熱 | 日射を反射する | 屋根や窓への入熱を抑える |
| 断熱 | 熱伝導を抑える | 室温変化を緩やかにする |
| 放射冷却 | 日射反射と吸収熱の放射 | 温度上昇と蓄熱を抑える |
ラディクールは、この放射冷却の仕組みを応用した素材です。建物の熱源や施工部位に応じて、遮熱・断熱と組み合わせて使用します。
オフィスでの施工場所と導入方法
ラディクールには、屋根や屋外設備に施工する放射冷却塗料と、オフィスビルなどのガラス面に施工する放射冷却フィルムがあります。窓際の暑さが課題なら放射冷却フィルムラディクール、最上階や屋根からの輻射熱が課題なら放射冷却塗料ラディクールを検討します。屋外設備への塗装も選択肢ですが、室内のOA機器による発熱や空調ムラには、機器配置・換気・空調の見直しが必要です。
導入前には、ガラスや屋根材の種類、既存の防水層、日射条件、施工面の劣化状況を確認します。賃貸オフィスやテナントでは、施工区分と原状回復、管理者の許可も確認したうえで進めましょう。
導入効果の確認と注意点
導入効果は、施工前後で同じ位置・時間帯の温湿度や表面温度、空調の消費電力量を比較して確認します。初期費用だけでなく、施工面積、耐用年数、メンテナンス、空調負荷の変化を含めて評価することが重要です。
効果は建物の立地、方位、日射条件、既存の断熱性能によって変わります。屋根や防水層が劣化している場合は補修を優先し、改修計画や空調更新と合わせて導入範囲を検討しましょう。
よくある質問
Q. オフィスの空調の設定温度は何度が適切ですか?
A. 一律の設定温度ではなく、温湿度の実測値、外気温、日射、在室人数、従業員の体調に応じて調整します。事務所衛生基準規則では、空調設備を設ける場合、室温18℃以上28℃以下、相対湿度40%以上70%以下となるよう努めることが示されています。28℃はエアコンの設定温度ではありません。
Q. 温湿度計はどこに設置すればよいですか?
A. 直射日光やエアコンの風が直接当たる場所を避け、人が実際に作業する高さ付近に設置するのが基本です。窓際やOA機器付近など熱がこもりやすい場所にも設置すると、温度ムラの把握に役立ち、室温と湿度の管理がしやすくなります。
Q. テレワークでも暑さ対策は必要ですか?
A. 必要です。自宅でも熱中症のリスクはあるため、エアコンの適切な使用やこまめな水分補給を従業員に周知することが重要です。出社人数を絞ることでオフィスの冷房負荷を軽減できる利点もあり、暑さ対策と働き方の柔軟化は両立できます。
まとめ
オフィスの暑さ対策は、窓からの日射熱、屋根や外壁の輻射熱、OA機器や照明の発熱、そして空調効率を下げる室内環境という複数の原因を理解することから始まります。原因を把握したうえで、扇風機やサーキュレーター、冷感グッズ、遮熱フィルムといった手軽な対策から着手するのが現実的です。
慢性的な暑さが続く場合は、空調設備の更新や断熱・日射対策といった建物全体の改善を検討します。窓には放射冷却フィルムラディクール、屋根や屋外設備には放射冷却塗料ラディクールを使い分けることで、日射反射と吸収熱の放射を組み合わせた対策が可能です。
いずれの対策も、水分補給や休憩、適切な室温・湿度の管理といった仕組みづくりと組み合わせることで最大の効果を発揮します。自社のボトルネックを見極め、優先度の高いところから段階的に進めていきましょう。
この記事のまとめ
- ✓オフィスの暑さは外部の熱と室内の発熱、空調環境が複合して生じる
- ✓扇風機や冷感グッズ、遮熱フィルムなど手軽な対策から始めるとよい
- ✓慢性的な暑さには空調更新や断熱、放射冷却素材ラディクールなど建物側の対策を検討する
- ✓水分補給や休憩の仕組みと組み合わせ、優先度の高い対策から進める

